オックスフォード式 最高のやせ方
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評価:★★★★★
あけましておめでとうございます。
久しぶりの更新です。
今回は下村教授の本「オックスフォード式 最高のやせ方」を読みました。
【全体の感想】
本書は平たく言うとダイエットについての本です。
ただ、他のダイエット本と異なる点は、科学的知見に基づいてどのようなことを実践すれば健康的に痩せられるかが紹介されている点です。
そういう意味では、いわゆるただの実践的なダイエット本ではありません。
ただし、科学的に踏み込んだことについては、簡単な言葉で説明してあるので心配はいりません。
まず、全体的には余白が多くスラスラ読めます。
それだけではなく、読者に語りかけるように書いてあるのでそれもまた読みやすい。
ところどころ冗談を交じえながら書いているところも飽きずに読めるのでGoodでした。
読書に慣れている人なら1~2時間くらいで読めるのではないでしょうか。
また、冗談とともに下村教授の趣味・嗜好、そして思考などパーソナルなことも書かれており、下村教授とはどんな人かを知ることができる点も面白いです。
本書の構成としては以下のような流れです。
↓
○メカニズムから導かれる痩せるとは
↓
○ダイエット実践方法
そして、本書で重要な結論は以下の3点です。
・空腹時に運動すること
・低強度の運動を長時間行うこと
・あせらずゆっくり、この運動習慣を続けること
どうして上記3点が重要なのか、ということを科学的な知見から十分に説明しているのが本書の特徴です。
【科学的な説明】
上記の通り、本書は科学的な知見に基づいたダイエット法を実践することが目的です。
ですので、まず「食欲とはなんぞや」ということが科学的にサラッと説明されております。
同じく、体内での糖質・脂質・タンパク質の代謝メカニズムもサラッと説明されております。
サラッとというのは全く知識がない人でしたら知らない単語の意味を十分に理解しつつ進めれば全体を把握できる程度、少しでもバイオロジーを知っている人なら飛ばし読みでも理解できる程度です。
また、糖質制限ダイエット・食事制限ダイエットの良し悪しについても簡単に言及してありました。
食欲やエネルギー代謝については脳と末梢どちらもの観点からを説明してあり、全身的な食欲・代謝について簡単に理解できます。
このように代謝メカニズムをもとにダイエット方法を紹介している本はなかなかないのではないでしょうか。
代謝メカニズムから効率よくダイエットしたい人にはピッタリの本です。
【気になったこと・考えたこと・忘れないためのメモ】
私の研究領域は代謝ではないので、以下、私の勉強もかねて少し本文を抜粋しましたので、購入を検討する際の参考にしていただければと思います。
・・・・・・・〈以下、一部抜粋と感想 (本書の紹介も兼ねて)〉・・・・・・・
・14のダイエット方法について、6ヶ月後には体重が減少しているが、その1年後には元に戻っている [本書に参考文献あり]
・糖質制限 = 適正量の糖質摂取に是正するならよい
・タンパク質、糖質、脂質はすべてATP合成につながる 、だからこれらが3大栄養素
・運動後72時間は筋細胞上にグルコーストランスポーターが存在する → 運動で痩せるメカニズム
・運動 → アドレナリン産生 → ホルモン感受性リパーゼ活性化 (HLS) 活性化 → 中性脂肪分解 → 脂肪酸産生
・糖質制限 → グルカゴン産生 → ホルモン感受性リパーゼ (HLS) 活性化 → 中性脂肪分解 → 脂肪酸産生
・飢餓状態が20時間続くと糖原性アミノ酸が分解される筋肉が分解される
・解糖系のみのATP合成は40秒ほどしかもたない
・短時間の運動ではグルコース・グリコーゲンをベースとした代謝がおきる → やせない
・筋肉内にも異所性脂肪として中性脂肪か存在する
・アスリートの筋肉内の異所性脂肪の周りにはミトコンドリアが多い
・強度の低い運動を比較的長く30分など持続すると血中の脂肪酸が利用される、筋肉内の脂肪酸も利用される
・空腹時に運動すると脂肪酸が使われる
・眠中はインスリンの作用は弱められている → 低血糖にならないため
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【低カロリーの食事について周辺情報】
さて、ここからは私が知っている本書に少し関わる周辺情報についてまとめたいと思います。
本書にも書かれておりましたが、近年は飽食の時代であり、カロリー過多になりやすい食事が多いです。
つまり、「食べすぎ」です。
実は、カロリーについては最近非常に興味深い報告があります。
それは「寿命」との関連性です。
結論から申し上げますと「低カロリー食は寿命を延ばす可能性がある」という研究結果が昔からいくつか出ております。
The Retardation of Aging in Mice by Dietary Restriction: Longevity, Cancer, Immunity and Lifetime Energy Intake
Extending the lifespan of long-lived mice
通常、実験マウスは常にエサを食べられる状態で飼育しており、野生のねずみと比べればいわゆる「飽食」の状態にあると考えられます。
つまりカロリー過多です。
上記論文では、その摂取カロリーを制限すると寿命が延びることを報告しております。
このように飽食下におけるカロリー制限は寿命を延ばす可能性があります。
本書でもダイエットにおいて摂取カロリーの適正摂取は歓迎することが書かれておりました。
昔から「腹8分目」とはよく言ったもので、「食べすぎ」は百害あって一利なしではないかと感じます。
治療的観点からは、高カロリー食の寿命短縮に対してポリフェノールの一種であるレスベラトロールが対抗することが報告されております。
Resveratrol improves health and survival of mice on a high-calorie diet
高カロリーであふれている世の中では、ポリフェノール(赤ワイン、赤ぶどう、ピーナッツなどに含まれる)が健康に良いかもしれません。
ただし、今の段階ではマウスでの実験結果のみでヒトで同様のことが起きるかわからないところは注意です。
【おわりに】
個人的に少々交流があった下村教授ですが、先生を説明する専門的なキーワードは「糖尿病、代謝、ポタシウムATPチャネル」あたりでしょうか。
臨床 (診断) から基礎研究まで幅広くご活躍されており、非常に尊敬できる先生です。
基礎研究は学術的な価値を見出すのみならず、ヒトの治療に必ず役に立てるという意識が強く、本書もその一環だと思います。
実際に先生は新生児糖尿病「DEND症候群」というポタシウムATPチャネルの異常から先天的に引き起こされる病気に対して基礎研究から始めて、世界で初めて治療法を発見されました。
とても謙虚であり、フランクであり、話しやすく、冗談もとてもおもしろく、年の差や肩書の差などをまったく感じさせない接し方をしてくださいます。
私が世界一尊敬でき、信用のできる人です。
そんな先生の本であるためダイエットを失敗してきた方や代謝に興味のある多くの方に、是非、手にとっていただきたいです。